『マツリボンバイエ』
 場外馬券場。未だ勝ったことのない馬、マツリボンバイエに大金をつぎ込もうとする龍之介と安夫。レースの展開を予想して白熱する。オッズ82倍の馬が出走した。

 これもエチュードを使った作り方をしています。エチュードにもまたいろいろありまして、まず競馬物をやろう、ということは私が言い出します。ですが、私自身は競馬をやりません。馬の名前もわかりませんし、競馬好きが駆使する専門用語の類もわかりません。最終的に劇中でレースの実況があるのですが、実況に使われる言葉もわかりません。ですが、この話をやってくれる二人の役者は競馬に詳しく、うるさい二人です。もちろん、それを知っているから、競馬物をやろうと言い出したわけです・・ まず、話のあらましを私が作り「こういった状況の場合、どんな言い回しがあるのか?」という事を聞いて、競馬通の言葉に翻訳してもらいます。それを元に、私がさらに言葉を付け加えたり、整理したりします。思わぬおもしろい言葉が出てきた場合は、お話の流れを変えて、その言葉やシチュエーションを生かす方向にもっていったりするわけです。エチュードを用いた作り方には、流れを役者に任せる場合、流れは私が作り言葉や言い回しを役者に作ってもらう場合、があり、これは後者の作り方で完成させたものです。短編を組み合わせた演劇というコンセプトの『メトロ』ではありますが、やはり最後は2時間観終えて「ああ、おもしろかったね」と劇場を後にしてもらわないと困ります。よって最終話は『エンターティメント』な作品を用意するということは毎回、暗黙の決め事になっています。(Vol.9のみ例外)